見落としがちな“舌”の働き
「歯が大切なのはわかるけど、舌についてはあまり意識したことがない」そんな方も多いのではないでしょうか。実は、舌は食べる・話す・飲み込むといった私たちの生活に欠かせない動きを支える、非常に重要な器官です。
今回は、舌の役割や歯並びとの関係、舌の機能維持のポイントについてご紹介します。
舌の主な役割
1.食べ物を効率よく運ぶ“運搬係”
食べ物を口に入れて噛み砕いた後、舌がそれを上手にまとめ、喉の奥へと送り届けます。このとき、舌がうまく動かないと、うまく飲み込めなかったり、むせてしまう原因になります。
特に高齢になると舌の筋力低下が見られることもあり、誤嚥のリスクが高まります。
2.噛む力をサポート
舌は、ただ食べ物を運ぶだけではありません。上下左右に動いて、食べ物を歯の噛める位置に運んだり、頬と連携して口の中の食べ物をまとめたりしています。
舌がうまく機能しないと、食べ物が口の中でバラバラになり、しっかり噛めず、消化不良につながることもあります。
3.正しい発音に欠かせない
サ行、タ行、ラ行など、多くの音の発音には舌の動きが必要です。舌の位置や動きに問題があると、滑舌が悪くなったり、ことばが聞き取りにくくなることもあります。
4.味わう
舌には「味蕾(みらい)」と呼ばれる味を感じるセンサーがあります。甘味・塩味・酸味・苦味・うま味などを感じ取り、食事の楽しさや満足感を支えています。
加齢や疾患で味覚が低下すると、食欲にも影響します。
舌と歯並びの深い関係
実は、舌の位置や動きは「歯並び」や「顎の発達」にも大きく関係しています。
本来、舌は上あごに軽く触れている状態が理想ですが、舌が常に下に落ちている状態(低位舌)や、前に出る癖(舌突出癖)があると、歯に不要な圧がかかり、出っ歯や開咬(前歯が閉じない状態)、受け口などの原因になることもあります。
特にお子さんの場合、舌の癖が長く続くと、成長にともなって歯並びや骨格に影響が出やすくなります。
また、舌の筋力が弱いと口がポカンと開いた状態が続き、口呼吸や姿勢の崩れ、さらには虫歯や歯周病のリスクも高まります。
舌の健康を保つには?
舌は筋肉の塊ですので、使わないとどんどん衰え、日常生活にも支障をきたしてしまいます。以下のような方法で、舌の健康を保ちましょう。
- 毎日の食事でよく噛むこと
- 舌を使った体操(例:舌を出したり左右に動かす)
- 定期的な歯科受診でお口全体のバランスをチェックする
- 舌の清掃(やりすぎはNG、優しく行いましょう)
まとめ
今回は、舌の役割や歯並びとの関係、舌の機能維持のポイントについてご紹介しました。
歯や歯茎と同じように、舌の健康にも目を向けることが、お口全体の健康、そして快適な生活につながります。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。舌の機能や状態も含めて、しっかりと診察させていただきます。