矯正歯科
小児矯正
小児矯正は、「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」に分けられます。Ⅰ期治療は、乳歯列期や混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する歯列)に実施します。歯が並ぶための土台となる顎の骨の成長を促すことで、永久歯がしっかりと生え揃うためのスペースをつくります。Ⅱ期治療は、永久歯に生えかわってから実施します。歯にブラケット&ワイヤーを装着して、歯を動かすことで、歯並びを整えます。Ⅰ期治療で永久歯がきちんと並ぶためのスペースが完成すれば、Ⅱ期治療そのものが不要になったり、健康な歯を抜歯するリスクを回避できたり、部分的な矯正で済むケースが多くなります。
小児矯正が求められる背景
近年は、食の軟食化が進んでいます。子供の頃から軟らかい食事が主体となり、噛む回数が減っています。そのため、顎が発達せずに小さくなっています。しかし、栄養状態は良くなっているので、一本一本の歯は大型化しています。顎の骨が小さくなっているにも関わらず、歯は大型化しているために、歯の生えるスペースが不足し、斜めに生えてしまったり、重なりあって生えて、歯並びの乱れが起きているのです。
顎のスペースが狭いことによる問題
上顎が小さいと鼻孔への気道も狭くなります。そのため、顎が小さいお子様は鼻がつまり、口呼吸になりがちです。鼻は湿度・温度調節、汚染物質の除去など呼吸を調節する機能を持っていますが、口にはそんな機能がありません。口から取り込まれる空気は、喉を直撃しリンパ組織に損傷を与え、免疫を低下させアレルギーを引き起こすと考えられています。
顎の大きさを適切に誘導すれば、鼻呼吸しやすい環境をつくることができます。その結果、免疫の低下やいびきが改善されて、アレルギー症状の緩和や学力向上の期待ができると言えます。また、集中力向上や運動能力向上など、歯並び改善以外にも多くのメリットが報告されています。
顎のスペースが狭いと発生する可能性のある症状
- 顎のスペースが狭いと鼻腔も狭くなる→呼吸がしづらくなる
- 舌が収まるスペースが小さくなり、舌が喉の後方にずれる。→呼吸がしづらくなる
- 呼吸がしづらくなると、いびきや口呼吸になりやすくなる
- 口呼吸になると、免疫が低下し喘息、鼻炎、アトピーが悪化することが確認されている
- いびき等で酸素が脳へ供給されづらくなると、脳の発達に影響が出て学力が低下する
健全な成長発育を
目指す顎顔面矯正
上記のように、歯が生え揃うスペースが足りない場合に有効な治療方法が「顎顔面矯正」です。発育が終了してしまった成人の方は対象となりませんが、発育過程にある5歳~9歳までのお子様であれば、矯正治療により発育を促してあげれば、正常な発育の軌道にのります。
顎顔面矯正では、主に「急速拡大装置」と呼ばれる専用の器具を装着します。上顎の骨の正常な成長を促し、上顎の骨全体を広げ発育をコントロールしま
す。そして、正常に発育した顎の骨に永久歯が生え変わっていきます。
その結果、Ⅱ期治療となるブラケット&ワイヤー装置を着けなくても自然ときれいな歯並びを獲得できる可能性が高まります。また、歯を痛めることもなく矯正後の後戻りもほとんどみられません。
顎顔面矯正で主に
使用する装置
急速拡大装置
上顎の骨には「正中口蓋縫合」という繋ぎ目があります。そこで左右ふたつの骨に分割されています。急速拡大装置の中央部に組み込まれているネジを回すことによって、繋ぎ目から徐々に拡がり、上顎の骨が整えられます。その結果、骨の成長が促されて、永久歯が正しく並ぶスペースができます。この装置は固定式で、歯の裏側に装着します。したがって、あまり目立ちません。
リンガルアーチ
上顎の拡大がすすむと、下顎の歯列も調整する必要があります。下顎には、主にリンガルアーチという装置を用います。下顎の骨は上顎とは違い、ひとつの骨で構成されているます。したがって、同じように拡げることができません。内側に傾いている歯を起こすようにして歯列部分だけを拡げます。 この装置も固定式で、歯の裏側に装着しますので、あまり目立ちません。