歯周病について
歯周病は、歯ではなく、歯を支えている骨が破壊されていく病気です。歯周病の初期段階は、ほとんど症状がなく、歯周病にかかっていることになかなか気付きません。そのため、知らず知らずのうちに進行してしまうやっかいな病気でもあります。日本人の30歳以上で約80%、40~50歳代では90%の方が歯周病を患っています。
歯周病の原因はプラーク
歯周病の原因は細菌です。細菌の塊であるプラーク(歯垢)が付着すると歯周病が引き起こされます。
プラークは、うがいなどでは、簡単に除去することが出来ません。プラーク1ミリグラムの中に、500種類以上の細菌が1億個以上いると言われています。
プラークは、長い期間放置されると、歯と歯の間で、石灰化して歯石(プラークの死骸が石のように硬くなった状態)になります。歯石になってしまうと、もはや自分では取り除くことができないため、歯科医院で専門の器具を用いて除去することしかできなくなります。
歯を失う原因の第1位は歯周病です
多くの方が、歯を失う最大の原因は虫歯だと考えています。しかし、現実は異なります。歯を失う原因の第一位は歯周病です。歯周病は歯を支えている歯槽骨が溶けていく疾患です。この歯槽骨が溶けていくと、歯は支えを失って、最終的には抜け落ちてしまうのです。
こんな症状は
ありませんか?
歯周病は初期段階ではほとんど症状が現れません。症状に気付いた頃には、すでに重度の歯周病になっていたということも少なくありません。つまり、歯周病は「早期発見」が大切です。次のような症状はありませんか?もし、思い当たれば、あなたは「歯周病」を患っているかもしれません。
歯周病セルフチェック
- 歯肉から出血する
- 歯を磨いた時や固い物を噛んだ時に、歯肉から出血する場合は注意が必要です。健康な状態の歯肉であれば、歯磨きで出血することはほとんどありません。出血する場合は、歯肉に炎症が起こっているので、歯周病になっている可能性が高いと考えられます。
- 口の中がネバネバする
- 唾液の中に歯周病菌が多く存在すると、「口の中がネバネバする」と感じることがあります。違和感を覚えたら要注意です。
- 歯肉から膿がでる
- 歯周病が進行すると、歯周ポケットがつくられます。歯周ポケットとは、歯と歯肉の間にできる溝であり、プラーク(細菌の塊)が溜まりやすくなります。歯周ポケットの中では、免疫細胞が歯周病菌と戦います。その死骸が膿となり、歯肉を押すと膿が出てきます。
- 歯ぐきから膿がでる
- 歯周病が進行すると歯ぐきに膿が溜まることがあります。
- 口 臭
- 口の中で歯周病菌が繁殖すると臭いを発します。口臭が気になり始めたら歯周病の可能性が高いと言えます。
歯周病の進行と
その治療方法
歯周炎
歯と歯肉の間に細菌の塊であるプラークがたまり、細菌の繁殖によって歯肉に軽い炎症が起こった状態が「歯肉炎」です。プラークをコントロールするための歯磨き指導と歯のクリーニングを受けることで回復に向かいます。
軽度歯周病
プラークが歯石に変わり、歯肉の炎症が強くなり、赤みを帯びてきた状態が「軽度歯周病」です。歯肉の腫れや出血などを伴います。この段階であれば数回にわたる歯の表面と根面の歯石除去を行うことで改善します。
中等度歯周病
出血や口臭という症状があらわれ、歯石の付着も多く見受けられる状態が「中等度歯周病」です。歯を支える骨が破壊されて、歯周ポケットも深くなります。この段階では、歯の表面に沿って歯周ポケットの奥まで付着した歯石を除去する必要があります。場合によっては、麻酔を実施する場合もあります。
重度歯周病
歯周病がさらに進行し、歯肉は化膿して真っ赤に腫れた状態が「重度歯周病」です。歯を支える骨の大部分が破壊されて、歯がグラグラと動きます。重度の場合、歯周外科処置が必要です。それでも、効果があらわれない場合は、残念ながら抜歯しなければいけないこともあります。
歯周病と全身疾患の関係
歯周病は早期発見・早期治療が大切です
歯周病は、口腔内だけではなく、心臓や血管などの器官にも悪影響を及ぼします。歯周病の早期発見は、全身の健康を守るためにも重要であることを認識し、早期治療あるいは予防するよう心がけましょう。
- 糖尿病
- 糖尿病を患っている方は、歯周病菌に対する抵抗力が弱く、歯周病に感染しやすく進行が早いと考えられています。また、歯周病菌により糖尿病が悪化するという疫学調査も発表されており、歯周病を治療をした後は、糖尿病が改善された症例の報告もあります。
- 心筋梗塞
- 重度の歯周病まで進行すると、歯周病菌が血管内に侵入して、血液の流れにのり、全身の臓器に到達します。歯周病菌が作り出したアテローム性プラークという物質が血液の中に入り込むと、血栓(血の塊)をつくることが証明されていてます。血栓が心臓の血管を詰まらせると、心筋梗塞の原因になります。
- 脳卒中
- 歯周病が遠因となって動脈硬化が起きると、血栓ができやすくなり、脳塞栓を起こす危険性も高まります。歯周病を患っている方は、健康な人にくらべて、脳塞栓のリスクがおよそ3倍に高まると言われています。
- 誤嚥性肺炎
- 肺に細菌が繁殖して引き起こされる疾患が誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、口腔内で繁殖した歯周病菌だと考えられています。
- 早産/低体重児出産
- 体重2500グラム未満で生まれる赤ちゃんのことを低体重児、あるいは未熟児とも言います。歯周病菌の毒素や炎症物質により母体の血液濃度が高まると、子宮筋が収縮して早産や低体重児出産を招く恐れがあります。
歯周病は予防する時代です
現代の歯科医学では、歯周病の原因が解明されており、歯周病の発症を未然に防ぐリスクコントロールの方法が確立されています。したがって、患者様自身がリスクを知り、そのリスクをコントロールして、歯周病を患わないようにすることが本当の治療だと私たちは考えています。そうすれば、年齢を重ねても、歯で苦労する心配はありません。予防こそが最良の治療と言えるのです。